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科目ナンバリングについて
こちらを参照してください。  
講義コード
9831040-1 
授業科目名
経済分析 
授業科目名(英字)
Economic Analysis 
時間割
前期 月曜日 7校時
対象年次及び学年
1年次 
担当教員

長町 康平

ナンバリングコード・水準
M2 
ナンバリングコード・分野
ANM 
ナンバリングコード・ディプロマ・ ポリシー(DP)
ABX 
ナンバリングコード・提供部局
ナンバリングコード・対象学生
ナンバリングコード・特定プログラムとの対応
ナンバリングコード・授業形態
Lg 
ナンバリングコード・単位数

関連授業科目
ゲーム理論 ,統計分析,地域経済分析,都市・環境政策の経済評価,費用便益分析 
履修推奨科目
ゲーム理論,統計分析 
学習時間
授業90分×15回+自学自習(準備学習 30時間 + 事後学習 30時間) 
授業の概要
この授業では,経済や経済政策の体系的な理解に役立つ経済学の考え方(経済学的思考)について,ミクロ経済学と呼ばれる分野(ゲーム理論を除く)を中心に扱う.各トピック毎に,基礎的な理論と応用例(ビジネスまたは政策)を紹介する. 
授業の目的
本授業の目的は経済学的思考を習得すること,経済理論を現実に応用した事例やその方法を理解することである.これらは経済を体系的に理解し,経済政策を評価・立案するために欠かせない.また,経済学をベースとした応用科目を理解する上でも必要である. 
到達目標
1. 経済学的思考について説明できる(DP「専門知識・理解」).
2. 市場が果たす役割と限界について,モデルを使って説明できる(DP「研究能力・応用力」).
3. 市場が機能しない場合の対処法とその意図や効果について,具体例を用いながら説明できる(DP「専門知識・理解」).
4. 経済理論の現実への応用について,具体例を複数挙げて説明できる(DP「研究能力・応用力」). 
成績評価の方法
授業に10回以上参加した学生を対象に,次の内容で評価する.

授業への取組み姿勢(第1回から第14回までの発言内容・頻度等)10%,グループワーク・ディスカッションへの貢献20%,宿題(11回)70% 
成績評価の基準
成績の評価は、100点をもって満点とし、秀、優、良及び可を合格とする。各評価基準は次のとおりとする。
 秀(90点以上100点まで)到達目標を極めて高い水準で達成している。
 優(80点以上90点未満)到達目標を高い水準で達成している。
 良(70点以上80点未満)到達目標を標準的な水準で達成している。
 可(60点以上70点未満)到達目標を最低限の水準で達成している。
 不可(60点未満)到達目標を達成していない。
ただし、必要と認める場合は、合格、了及び不合格の評語を用いることができる。その場合の評価基準は次のとおりとする。
 合格又は了 到達目標を達成している。
 不合格  到達目標を達成していない。 
授業計画並びに授業及び学習の方法
【授業計画】
第2-4回は最も基礎的な分析道具である需要と供給のモデルを使った市場の分析方法を学ぶ.その上で,より進んだ分析として,第5-10回では経済主体(消費者と生産者)の意思決定や市場の役割・限界を学ぶ.第11-14回は市場がうまく機能しない原因とその帰結や対処法について,第1-10回の内容を基礎としながら学ぶ.いずれの回も理論とそれに関連する事例を組み合わせて学ぶことで,経済学の応用方法について理解を深める.

第1回 イントロダクション
ビジネスや政策での応用例に触れつつ,経済学がどのような学問かを学ぶ.

第2回 需要と供給
需要曲線と供給曲線について学び,需要予測における因果推論について議論する.

第3回 市場均衡
需要と供給のモデルを使った市場分析について学び,人工知能と雇用の問題に応用する.

第4回 需要の価格弾力性
需要の価格弾力性という概念を導入して需要曲線から得られる洞察を深め,重要な応用例として価格差別を紹介する.

第5回 消費者行動(1/2)
支払許容額という概念を導入し,需要曲線との関係を学ぶ.また,関連する事例としてオークションへの応用を紹介する.

第6回 消費者行動(2/2)
効用最大化と呼ばれる消費者行動の定式化を紹介し,消費者の意思決定分析への実証的応用について議論する.

第7回 生産の費用
様々な費用の概念を導入し,企業の生産活動に伴う費用や費用構造が持つビジネスへの含意について議論する.

第8回 生産者行動(1/2)
生産者行動を利潤最大化問題として定式化する方法を学び,供給曲線との関係について議論する.

第9回 生産者行動(2/2)
利潤最大化の観点からデジタルコンテンツのサブスクリプションサービスについて議論する.

第10回 市場の効率性
市場がうまく機能する(しない)条件を整理しつつ,市場の意義を学ぶ.重要な応用例として自由貿易を取り上げ,自由貿易・貿易自由化の意義と課題を議論する.

第11回 外部性
外部性と呼ばれる経済活動の特徴がもたらす資源配分上の問題とその対処法としてピグー税・補助金について学ぶ.重要な応用例として,地球温暖化問題とカーボンプライシングについて議論する.

第12回 公共財
公共財と呼ばれる財・サービスの特徴とその供給のあり方について学ぶ.関連する事例として,Evidence-Based Policy Making (EBPM)について紹介する.

第13回 独占
独占の弊害やその効果的な活用方法について学んだ上で,重要な政策課題であるデジタル・プラットフォームの規制についての議論に応用する.

第14回 情報の非対称性
日常生活やビジネスの事例を取り上げつつ,情報の非対称性により生じる問題(モラル・ハザードと逆淘汰)とそれへの対処法について学ぶ.また,関連する重要な事例として,2000年代後半の世界金融危機への応用を紹介する.

第15回 グループワーク・ディスカッション
グループに分かれて,地域活性化に関するテーマ・課題について経済学的に考察してもらう.さらに,その結果を発表してもらい,全体でディスカッションを行う(グループが多い場合,投票によりディスカッションのテーマを決定する場合がある).

(注)授業の進捗状況等によって授業計画を変更することがある.


【授業方法】
この授業はすべての回で対面実施を予定している(ただし,状況に応じて遠隔授業を行う可能性がある).授業はプロジェクターと板書を用いた講義形式を中心に進める(資料はMoodleにアップロード).授業を補足する動画をMoodleにアップロードする予定であり,授業は補足動画の内容を前提として進める(学習時間(事後学習)に位置付けられる).

【自学自習に関するアドバイス】
授業は積み上げ式であるため,参考書を使った予習・復習や宿題により,授業内容をその都度理解することが重要になる.わからない内容はできるだけ早く疑問を解決することが望ましい.

予習について,第1回から第14回までは参考書の該当する章を読むこととする.第15回については,まず,第1回から第14回までの内容について,経済主体の意思決定を理解したり,あるいはその内容を是正するために,意思決定の背後にあるインセンティブの構造をどのように捉え,政策等の対処法をどのように位置付けていたかという観点から振り返る.その上で,グループワークで議論するためのテーマについて整理し,当日までに,経済学的な観点から具体的な課題について整理する.

復習については,これに宿題の解答や補足動画の視聴を位置付けるとともに,宿題・補足動画以外については以下を参考に復習されたい.

第1回 経済学的思考について,身近な例に当てはめて考える.

第2回 需要曲線をシフトさせる要因について,身近な例に当ては待て考える.因果推論について,授業では扱わなかった独自の例を考えてみる.

第3回 市場均衡の決定について復習した上で,関心のある事例に対して需要と供給のモデルを応用する.

第4回 需要の価格弾力性や価格差別の定義を復習した上で,身近な例を用いつつ,価格弾力性の違いやその決定要因,価格差別について考察する.

第5回 支払許容額と消費者余剰の定義を復習し,身近な例(財)を取り上げて,他者の支払許容額を推測する方法を需要曲線やオークションの議論を参考に検討する.

第6回 効用や無差別曲線,効用最大化のツールを復習し,意思決定に関する実証分析によって,意思決定者のどのような情報を得ることができるか考える.

第7回 身近な例を用いつつ,様々な費用概念の定義を復習する.また,費用構造の違いがビジネスモデルに与える影響について,独自の例を検討する.

第8回 企業の利潤最大化行動という定式化と供給曲線の導出について復習する.また,各市場構造に当てはまる例を検討する.

第9回 身近なデジタルコンテンツやプラットフォームのサービスの価格体系において見られる特徴についてし,授業で学んだ概念と関連付けながら考察する.

第10回 市場の効率性の意味と「見えざる手」の本質,厚生経済学の基本定理について復習する.参考書を参考にしつつ,自由貿易以外の例で市場の規範的分析を学ぶ.

第11回 外部性の定義,それにより生み出される非効率性,対処法について復習する.温室効果ガス排出以外の例で外部性の例を挙げ,外部性の源泉・影響・対処法について考察する.

第12回 公共財の性質とフリーライドのメカニズム,公共財の最適供給の条件について復習する.EBPMの具体例について調べる.

第13回 独占の源泉について授業以外の例を考える.独占企業の意思決定と効率的な資源配分がなぜ乖離するのか,独占企業のインセンティブの観点から復習する.デジタルプラットフォームの意義と課題を踏まえた上で,データの所有権について考える.

第14回 情報の非対称の分類・定義を復習した上で,身近な事例について,その問題の構造や対処法について考察する.

第15回 グループワークやディスカッションにおいて,どこまで経済学的思考に基づいて議論できていたかを振り返る.第1回から第14回までの授業内容や第15回での講師の説明を踏まえつつ,グループワークで取り組んだ内容について,経済学的思考の観点からブラッシュアップを行う.

なお,各回の予習・復習時間は予習が1時間,復習が2時間を目安とする.さらに,上記と並行して,あるいは授業終了後,参考書を通読することも重要である(15時間). 
教科書・参考書等
教科書は特に指定しない.以下に挙げる入門レベルのテキストの中から好みに合わせて選択することをお勧めする.

P. クルーグマン・R. ウェルズ (2017)『クルーグマン ミクロ経済学(第2版)』東洋経済新報社(税込5,500円)
N.G.マンキュー (2019)『マンキュー経済学I ミクロ編(第4版)』東洋経済新報社(税込4,400円)

より厳密にミクロ経済学を学びたい場合,中上級のテキストとして神取 (2014)がお勧めである.

神取道宏 (2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社(税込3,520円)

ティロール (2018)は,2014年にノーベル経済学賞を受賞した著者が,地球温暖化問題や金融危機,技術革新等の世界の重要課題について,行動経済学といった最新の学際研究を伝統的な経済学体系を補完する形で用いつつ,データを提示しながら丁寧に分析している.授業では伝えきれない経済学の切れ味を体感するのに最適なテキストの1つである.

J.ティロール (2018)『良き社会のための経済学』日本経済新聞社(税込4,620円) 
オフィスアワー
授業後1時間.場所は教室または研究室(状況に応じて対応). 
履修上の注意・担当教員からのメッセージ
1. この授業は,受講生の多様なバックグラウンドを考慮し,必要な場合を除いて数式や統計分析を排し,グラフの利用や直感的な説明に努めるという入門的な内容になっています.これは授業の目的が経済学の考え方や現実への応用例のイメージを掴んでもらうことにあるためです.
2. 時間の都合上,経済学の標準的な内容のすべてをこの授業でカバーできません.そのため,授業と並行して,あるいは授業後,参考書に挙げた入門レベルのテキストの通読が望ましいです.
3. 宿題の作成ではWord等の文書作成ソフトを,グループワークのプレゼン資料はPowerPoint等のスライド作成ソフトを利用することが求められます. 
参照ホームページ
Moodleを参照 
メールアドレス
nagamachi.kohei@kagawa-u.ac.jp 
教員の実務経験との関連